世の中に、もうこれからは難産はなし。女のつわり病み、夏づけ(むくみ)夏病み。(市村光五郎2・34)
ほいとう(乞食)などを見よ。身がやねこうても(弱くても)容赦はならず。それでも難産はなし。行く先で産み、水で洗い、懐へ入れ、後じまいはそのまま立って行き。それでも血の道はなし。親は難儀する子がかわいし(かわいそうである)。そこで金神が大目に見てやるなり。(市村光五郎2・35)
「世の中に、きれいずく(不浄を忌むこと)のないは金神とお医者ぎり。難産をした時、いささかなることは癒えでもするが、大めげは縫わねばならぬ。医者は口で糸をこくこく縫うなり。それで、お医者を心安くしておくのぞ。もうこれからは難産はなし。難産なければお医者もいらず」
金神様お下げとなり。(市村光五郎2・36)
女、喜び(出産)をいたしても、これからは、「金神様、無人にござるでおかげをくだされ」と言うて頼み、女、すぐにその子を産湯にいれても苦しからず。くどの前も苦しからず、もたれ物もせぬがよし。団子汁に限らず、何でもでき合いの物をいただいて食べれば、あたらず。いかにも、明き腹、根をつけること肝要なり。油強い物苦しからず。夜休むには、もたれ物せぬがよし。これまでは、女の体責めていためておる。これからは、金神が、女、安産を授け、安心をいたせよ。信心。(市村光五郎2・37)